So-net無料ブログ作成
  • ブログをはじめる
  • ログイン
ヘレニズム・ローマ ブログトップ
- | 次の10件

グノーシス主義 [ヘレニズム・ローマ]

グノーシス主義はヘレニズムの階層的な宇宙論をほぼそのまま採用しながら、その宇宙が悪神によって作られた悪の世界として否定します。
グノーシス主義については、姉妹サイト「神話と秘儀」の「グノーシス主義とソフィアの堕落」もご参照ください。

グノーシス主義はオリエントの反ローマ的な土壌に生まれた特殊な思想で、ユダヤ教、キリスト教、ヘルメス主義、ペルシャ系の宗教など、様々な宗教を越えて発展しました。
もともとはシリア内陸部北部からクルディスタン西部にかけての地域でヘレニズム的なズルワン主義の影響のもとに生まれて、シリア・イスラエルの沿岸地帯をとおってエジプトに持ち込まれました。
そして、その多くが堕落・救済神話を持っています。


グノーシス主義の神格(アイオーン)は、最初は「父」と「母」の2つでしたが次々と増加して複雑化していき、30を越えるまでになりました。
この複雑化は、ヘレニズム期に交流した様々の宗教が語る神の性質を次々と神格として取り入れて体系化した結果でしょう。
多くの派でのこのアイオーンの構造の特徴は、男女でカップルをなしているこです。
そして、最も高いレベルのアイオーンが4つの段階(8アイオーン)もしくは5段階(10アイオーン)で構成されることです。


また、グノーシス主義は中期プラトン主義を取り入れて、それを神話化している部分があります。
もちろん、存在を3層に分けるのはプラトン主義に由来するヘレニズム共有の宇宙論です。
ですが、もっと重要なのは、アルビノスの否定神学の影響を受け継いでいる点です。
グノーシス主義のいくつかの派では、至高存在を「語りえないもの」、「認識しえないもの」と表現します。


そして、物質的な宇宙は、「ソフィア」などの女性的なアイオーンが、本来の伴侶を無視して、認識しえない「原父」を認識しよう(交わろう)という階層を無視したおごりの結果、本来的な秩序を持たないものとして生まれます。


グノーシス主義のプトレマイオス派神話は、姉妹サイト「神話と秘儀」の「プトレマイオス派の堕落・救済神話」をお読みください。
この項では神智学的な別の観点から紹介しましょう。


至高存在は否定的な表現で表現されます。
最初の2神の「原父/思考」は「深淵/沈黙」という否定的な表現の名前も持っています。
この2神のこの側面は至高存在の静的次元であると考えることができます。
「原初の父=深淵」は表現も認識もできない存在です。
ですが、「原初の父」の「一人子」と呼ばれる「ヌース」だけが認識できます。
この点はアルビノスと同じです。
プトレマイオス派では、この「原父」が「認識できないという認識」が「グノーシス=英知」なのです。
そして、「思考」がアイオーンに「原父」を認識させようと欲した結果、最下位のアイオーン「ソフィア」が行動に出てしまうのです。


また、「境界」と呼ばれる存在があるのが特徴的です。
この「境界」は、至高の2神「深淵/沈黙」と他のアイオーンの神々との間と、神々と宇宙(中間界、物質界)との間に存在し、それらを隔てて秩序を保たたせています。
この「境界」は、マニ教ではアフリマンを閉じ込める牢獄としての宇宙という考えに、ユダヤ、キリスト教では神と被造物の間の断絶や、神の玉座にかかる幕として存在します。


そして、個々の存在が「形」と「認識」の2つで成り立っていると考えます。
プラトン主義では「形(イデア)」と「認識(ヌース)」は同時なので、これはプトレマイオス派独特の考え方です。
「ソフィア」が認識できないはずの「原初の父=深淵」に向かい「形」を失いかけた時、「境界」が現われてその働きによってに固められます。
そして、キリストがアイオーンの様々な存在に「認識」を伝えます。
ですが、この「認識」とはあくまでも「原初の父=深淵」が認識できないという認識なのです。


また、「ソフィア」から切り離された「意図」が無形な存在としてアイオーン界から放出され時、キリストがこれに「形」を与えて、イエスが「認識」を与えて救います。
また、「意図」が霊を生んだ時、天使からその「形」を受け取りました。
そして、霊魂が完成するのはロゴスによる「認識」を受け取る時です。こうして、この2つを兼ね備えた存在は、男性的存在と女性的存存在でカップルになります。
これで完成された構造なのです。
このように、グノーシス主義の「認識」とは、霊魂の本来的な神性の認識であり、ロゴスの認識であるのですが、同時に「原初の父=深淵」は認識できないという限界認識でもあるのです。


もう一つの特徴は、救世主が3つの次元で考えられていることです。
これはズルワン主義でミスラが3つの次元で現われることと同じです。
まず、「キリスト」は神の世界を救う存在です。
「境界」も「キリスト」と似た働きをします。次に、「イエス・救い主」は中間世界を救う存在です。
最後に、「イエス・キリスト」は人間を救うために受肉して物質世界にも現われる存在なのです。
「イエス・キリスト」は人間と同じく、「霊/魂/体」の3要素と、「救い主」の要素を持つとされます。


プトレマイオス派の神話は、「原父」は世界(アイオーン界)を生み出そうと思って、彼と共に最初から存在した「思考」の中にその種子を孕ませることで、「ヌース」以下の存在を生み出します。
ですが、別のグノーシス文献である「ヨハネのアポクリュフォン」は、至高神自身の認識と創造について興味深い神話を語ります。
これは至高神からプトレマイオス派の「思考・沈黙」に似た「大いなる流出(バルベーロー)・思考」が生まれる過程です。
この両者は男性と女性ではなく両性具有的存在だとされます。
「ヨハネのアポクリュフォン」によれば、至高神の「神的な光」が自分を「取り巻く光の水」の中に自身の「像」を見て認識した時、その「思考」が活発になって至高神の前に歩み出ます。
これは至高神の光神の「似像(影像)」です。
つまり、ヘルメス主義の「ポイマンドレース」でアントロポスが至高神の「似像」だったのと同じですが、その創造過程を「認識・思考」として、「主体と客体の分離」として描いているのです。
ここにはプラトン主義の「ヌース」に関する考え方の影響があるのでしょう。

ptremaios.jpg


nice!(0)  コメント(0) 

錬金術 [ヘレニズム・ローマ]

古代の錬金術については不明な点が多いので、ルネサンス期の資料によって錬金術を紹介しましょう。
ですから、ここにはヘレニズム期のアレキサンドリア以降の思想も含まれているはずです。

物質を再生・浄化させる錬金術のプロセスは秘儀のプロセスと似ています。
特にヘレニズム期の秘儀はヘルメス主義によって体系化されていますし、宇宙(物質)と人間は照応するものですからこれは当然なのです。

錬金術では、まず、素材である物質から、根源的な女性的要素(これは象徴的に「水銀」と呼ばれ、月や王妃、有翼の龍として表現されます。代表的な物質には銀があります)と根源的な男性的要素(これは象徴的に「硫黄」と呼ばれ、太陽や王、無翼の龍として表現されます。
代表的な物質には金があります)を抽出します。
これは秘儀で言えば、禁欲などの準備段階に相当します。

そして次に、抽出された男性的要素と女性的要素を結合させます。
すると、物質は根源的な元素(これはアリストテレスが「第1質料」と呼んだものです)にまで分解されて黒くなります。
この時、その物質が持っていた魂が出ていってしまいます。
このプロセスは「黒化」、「腐敗」と呼ばれていますが、秘儀での「死」、「冥界下り」に相当します。

次に、これを加熱すると物質は白くなります。
この時、物質に純粋で神的な霊魂(これは宇宙そのものの魂である「世界霊魂」の一部です)が入ってきて物質は生き返るのです。
この物質は「両性具有」として表現されます。このプロセスは「白化」と呼ばれます。
これは秘儀では「真夜中の太陽」を見い出した後の純粋な魂としての再生に相当します。  

さらに加熱していくと、物質は様々に変色して最後に赤くなります。
この時、物質は成長して、世界霊魂を凝縮した自然の完成した姿になるのです。
これは「哲学者の石」と呼ばれ、「王冠をかぶった子供」として表現されます。このプロセスは「赤化」と呼ばれますが、これは秘儀での神の「見神」や「児童神の誕生」に相当します。

「哲学者の石」はこの後、「発酵」と呼ばれる加工をほどこしてから実用します。
「哲学者の石」は固体状にも液体状にもなる物質ですが、これは一種の万能薬で、非金属を貴金属に変えたり、人間の病気を直したりすることができます。
つまり、神話における「生命の樹の実」や「生命の水」のような存在です。

このように、錬金術は人と同じように自然の物質を扱います。
人が死と再生の秘儀によって霊魂を高めるように、物質に化学的に死と再生を与えて高めていくのです。
この物質を高める練金術の作業では、作業を行う人間が物質の変成にしたがって精神を高めていかなければいけません。ですから、錬金作業は秘儀でもあるのです。
ただし、(キリスト教化した)錬金術の最終的な目的は、死後の祝福ではなくて、終末に復活して神の国に入る時と同じような神的な浄化された肉体を獲得することです。
これは「大いなる秘法(アルス・マグナ)」と呼ばれます。

ただ、上に紹介した中で、物質を4大元素ではなく男性原理・女性原理の2元論を強調して捉えたり、浄化された肉体の獲得を目指すといった思想は、アラビアの錬金術以降に現われたもので、中国の陰陽思想、練丹術の影響があるかもしれません。

alchemy.jpg 

左上:男性的要素と女性的要素を結合(結婚) 右上:両原理の物質からの脱魂(腐敗)
左下:霊魂の降下と復活(両性具有の誕生)  右下:哲学者の石(王冠を冠った子供)の誕生


nice!(0)  コメント(0) 

ヘルメス主義 [ヘレニズム・ローマ]

ヘレニズム~ローマ期の地中海世界最大の文化都市だったエジプトのアレキサンドリアでは、ヘルメス=トート神による啓示という形で多くの文書、『ヘルメス文書』と総称される書が書かれました。
これらで語られる思想には雑多なものが含まれていますが、総称して「ヘルメス主義」と呼ばれます。
ヘルメス主義はプラトン主義、グノーシス主義、ズルワン主義など様々な思想の影響を受けたハイブリッドな思想です。

ヘルメス文書には「占星術」、「魔術(降神術)」、「錬金術」を内容としたものも含まれます。
これらはいずれもこのヘレニズムの普遍的な万物照応の宇宙論を共有した不可分な存在です。
「占星術」は上位の世界である星の世界の影響が、いかに地上に現われるかを扱っています。
「魔術」はより積極的に、天上的な力をコントロールして地上に降ろして作用させることを扱います。
そして、「錬金術」は自然の物質を化学的に進化させて、物質や霊魂を高めるためのものです。

第4章で紹介したヘルメス主義の『ポイマンドレース』の神話をもう一度読んでみてください。この項では第4章とは異なった神智学的観点から紹介しましょう。

ポイマンドレースでは、至高存存を父であり光である「霊的知性(ヌース)」と考えます。
これを「光が無数の力からなり、世界が無際限に広がり、火が甚だ強い力によって包まれ、力を受けつつ序列を保っている様」と表現しています。
ここには、至高存在を様々な度合の微細な生成運動として捉えるような発想があると思います。

原人間の「アントロポス」は、至高の父に等しいような神的存在で、その「似像」と表現されます。
至高の父はこの「似像」を愛します。

そして、そのアントロポスは地上の水に映った自分の「像」に愛着を抱いて堕落した結果、地上の人間の霊魂の運命が始まります。
アントロポスという「似像」にはヌース(ロゴス)が存在するのですが、地上の水の「似像」にはロゴスが存在しないのです。
ポイマンドレースの神話には、自分自身と自分のイメージ(自我)を取り違えるというテーマがありますが、そこには善悪2つの段階が区別されているのです。

このヌース=神の息子が「ロゴス」であるのに対して、神の「プーレー(意図)」という女性的存在(娘)が存在します。
「プーレー」は「知的」な存在と、盲目的な存在の中間の存在ではないでしょうか?
この「プーレー」から闇であり素材的存在である「フュシス(自然・本性)」が生まれます。
これも女性的存在で、「ロゴス」を受け入れて、「火・空気」の元素を生みますが、「水・土」の元素はロゴスを失って「質料」となります。

「水・土」にロゴス(形・性質)がないというのはプラトン/アリストテレスとは異なる考え方です。
「フュシス」と「質料」はともに「ロゴス=イデア」という形・性質を欠いたものであるにもかかわらず、2つを別の存在としています。
このように女性的・素材的原理に対する独自な考え方がポイマンドレースの特徴の一つです。

poimandres.jpg


nice!(0)  コメント(0) 

中期プラトン主義 [ヘレニズム・ローマ]

ローマ時代のプラトン主義思想家達は総称して中期プラトン主義と呼ばれます。
中期プラトン主義の特徴は、アカデメイアのプラトン主義を受け継ぎながら、ストア派、ピタゴラス主義、そして、オリエントの様々な宗教・神智学の影響を受けて、それらをプラトン主義によって解釈、統合しようとしたことです。

1-2Cのプルタルコスはデルフォイのアポロン神殿の司祭になったプラトン主義者です。
彼はエジプト神話(オシリス/イシス神話)やペルシャ思想、グノーシス主義などをプラトン主義的に解釈しました。
他えば、オシリスの魂をイデア、イシスを場所=乳母である質料であり、同時にプラトンのエロスのような善をあこがれる存在、ホルスを両者から生まれた自然と解釈しました。
また、宇宙論的には、世界霊魂が生まれる前の存在として「原霊魂」を考えました。
「原霊魂」はイシスと悪神のセトを合わせた存在で、無秩序な存在ですが、イデアを受けて秩序的な存在となります。
つまり、彼は善悪を2元論的に考えず、素材的存在を無秩序ながら秩序を指向する存在と考えたのです。

2Cのアルビノス(アルキノス)は中期プラトン主義の代表的存在で、彼に至る様々な思想を総合しました。
そして、おそらくグノーシス主義や新プラトン主義のプロティノスに大きな影響を与えました。

彼はスペウシッポス同様に、至高存在(最高神)と霊的知性(ヌース)を区別しました。
そして、最高神を「善」、「完全性」、「不動」などとプラトン、アリストテレスを受け継いで肯定的に表現しながら、一方で、「語りえぬもの」としてすべての属性を否定しました。
ただ、霊的知性だけがそれを認識できるのです。彼は最高神について「善でもなく」、「無性質でもなく」、「動かしもせず、動かされもせず」…と否定をつなげました。

彼は最高神に至る方法として、肯定的な表現をしながらそれらを超えていく「上昇の道」、すべての属性を否定していく「否定の道」、象徴を使って表現する「類比の道」の3つの方法を提唱しました。
これは後にキリスト教神秘主義者の偽ディオニュシオスに影響を与えました。
「否定の道」は後に「否定神学」と呼ばれるようになります。

アルビノスは霊的知性(ヌース)とイデアをクセノクラテス同様に最高神の思考活動と考えました。
そして、これはアリストテレス同様に自らを対象として思考する思考で、最高の段階の現実態ではすべてを同時に永遠に認識(アリストテレスの「一切をなす知性」)するのです。

次に、世界霊魂を「眠れる魂」と「覚醒する魂」に分けて考えました。
これはプロタルコスに由来する考え方です。
「眠れる魂」はプラトンの洞窟の比喩のように、神の方向に向き直って眺めること(イデアを受けて秩序づけられること)によって「覚醒する魂」となるのです。
これは「復活する神」の神話の哲学的解釈でもあります。
つまり、アルビノスは世界をイデアの方向を向いたものと向かないものの2つに分けたと言えるのではないでしょうか。

また、宇宙を12面体と考えるアルビノスは、獣帯を数学的に30度づつに12分割しました。

アルビノスはダイモンの役割を存在の階の中ではっきりと位置付けました。
ダイモンは月下の神霊的存存在ですが、最高神の命令で月下の生物達を導く存在です。

彼は輪廻や人間の運命についてはっきりとした思想を展開しました。
人間は過った判断によって地上に受肉し、輪廻する存在です。
そして、自由意志によって行動しますが、その行為の結果は運命的に決定されます。
この考え方はインドの輪廻思想とほとんど同じですが、ストア派の摂理に従う運命論に対して主張されたものです。

(アルビノスの存在の階層)
最高神(父)
霊的知性(ヌース)
現実態
可能態
覚醒し魂
眠れる魂
自然
質料=乳母


中期プラトン主義の折衷的総合主義は北シリアの2Cのヌメニオスにも表れています。
ピタゴラス主義、ヘルメス主義の影響を受けながら、インド、バビロニア、エジプトの神智学を総合的に解釈しようとしました。

 


nice!(0)  コメント(2) 

12星座神話とミトラス教 [ヘレニズム・ローマ]

マクシムスらマギ達は7光線理論だけでなく、姉妹ブログの ミスラ教と原人の殺害 で紹介した通り、ミスラ教の秘教的な神話を12星座に対応させて新たに編集しました。
ここには12星座の秘教的な意味が込められています。
もともとこれにはヘレニズム的な折衷性がありましたが、これがさらにギリシャ・ローマ神話やオリエントの様々な神話を吸収して秘儀宗教化されて、トルコ経由でローマ世界を越えて全ヨーロッパに広がり、独自な宗教になりました。
これは「ミトラス教(ミトラス秘儀)」と呼ばれます。ですが、この12星座の神話(『ゾディアックの書』)とその意味は西洋の占星学には伝わりませんでした。

12星座の神話の中で注目すべきは、マズダと兄弟で堕落天使的な存在のアーリマンが、天使に復帰していることです。
堕落天使の神話はユダヤ、キリスト教にも伝わっていますが、この秘密教義はもちろん伝わっていません。
人間にはマズダと原人、原人の光のかけらの要素と、アーリマンの要素があるのです。
この考えは、20世紀のルドルフ・シュタイナーも独自に解釈して継承しています。
アーリマンは自我や分析的思考、物質世界へ志向を司り、これは魂を堕落させると共に上昇させる力なのです。

ここではペルシャの神名で神話を書きましたが、ミトラ教の神々はヘレニズム的状況の中で必然的にギリシャ・ローマの神々に対応づけられていました。
それは以下のような対応でした

(ミスラ教神話とギリシ・ローマ神話の対応)
至高の父
ズルワン
クロノス、サトゥルヌス、アイオーン
至高の毋
アナーヒター
ソフィア
至高の子
ミスラ
若クロノス、若サトゥルヌス 、若アイオーン
海神
アパム・ナパート
オケアノス、ネプチューン
木星
マズダ
ゼウス、ジュピター
原人
イマ
ディオニュソス
太陽
ミスラ
アポロ、ヘリオス
金星
アナーヒター
アフロディテ
地下
アーリマン
プルートー

 

一方、ローマ世界で広がったミトラス教は、一時、何人かの皇帝の支持を得て国教的存在にまでなるなど、キリスト教の最大のライバルになりました。

その神話は、ミスラ教の神話をベースにしていましたが、細部に関しては分かりません。
神名の翻訳などの部分では、数世紀以前にズルワン主義をギリシャ化して取り入れていたオルペウス派の発想を継承している部分があるでしょう。

秘儀宗教としては、ミトラス秘儀は「死して復活する神」を持ちません。
アフラマズダや原人間がこれに当たるとも言えますが、ミトラス秘儀ではあくまでもミトラスが主人公で、その最大のテーマは聖牛の供犠でした。
その意味では、生命の水、霊性としての血を流す聖牛が死して復活する神に相当するのでしょう。

ミトラス秘儀には7つの位階があって、それぞれが7惑星に対応していました。上から「父」/「太陽の使者」/「ペルシャ人」/「獅子」/「兵士」/「花嫁」/「大烏」です。
上位の4階位が参入者で、下位の3位階は奉仕者です。それぞれの位階には以下のような性質がありました。

(ミトラス秘犠の7位階の性質)
 
 
土星
ミトラスの代行者
太陽の使者
 
太陽
太陽神の代行者、、饗宴?
ペルシャ人
 
麦穂の刈り取り?
獅子
木星
蜂蜜にと火よる浄め、狩りに同行?
兵士
火星
花輪の儀礼
花嫁
金星
ヴェールを取りミトラス神と聖婚?
大烏
空気
水星
神々の使者、常に大烏の仮面をつける

 

秘儀の内容に関してはほとんど知られていませんが、饗宴、供犠、水壷による洗礼・浄化、目隠し、などなど、他の秘儀と同様な行事があったようです。
ミトラスの神殿は洞窟にあったので、秘儀は洞窟内で行われました。
また、秘儀参入者は死後、7惑星天を越えて恒星天にまで導かれると考えられたという説もあります。


nice!(0)  コメント(0) 

ストア派 [ヘレニズム・ローマ]

ストア派はヘレニズム期を代表する哲学です。
ストア派の哲学者の多くはオリエントの出身者で、多分ズルワン主義の影響を受けてギリシャ哲学の延長線上で表現を行いました。
ストア派を始めたのは、キプロス島出身でフェニキア系のゼノン(紀元前4-3世紀)で、彼はアテナイで活動しました。
その後トルコのタルソス出身のクリュシッポスによってストア派哲学は体系化されました。
さらにバビロニア出身のディオゲネス、ローマ最高の占星学者と呼ばれ、シリア出身でロードス島で活動したポセイドニオスらによって様々に発展させられました。

よくストア派は禁欲主義、エピクロ派は快楽主義として対比されますが、どちらも、間違った思い込みによって煩わされず、自然(神の摂理)と調和した精神的な平安を求める点で共通しています。

ストア派の宇宙論はヘラクレイトスと似て、至高存在を「技術的(創造的)な火」と呼び、同時にそれを「ロゴス」と考えました。
これらは神的で知性的で、諸元素に変化して、やがてまた「技術的な火」に戻るのです。
宇宙は収縮によって生まれ、やがて空虚に広がりながら燃焼して消滅して「技術的な火」に帰します。
宇宙はプラトン年(2万6千年)かかってこの生滅を繰り返します。

宇宙の構造は、月下の世界は4大元素が層状をなしていますが、その上の恒星天にはアイテールがあります。
恒星天には世界霊魂の指導的部分が存在します。
ストア派はこのアイテールをほぼ「技術的な火」と同じものと考えました。

ですが、ストア派の特徴は、ヘラクレイトスの「火」やロゴス、プラトンのイデアのような超越的な存在ではなくて、「技術的な火」と「ロゴス」を世界に内在するものと考えたことです。
「技術的な火」、「ロゴス」は能動的な原理として、受動的な素材の中に胎児・精子として内在して成長する創造的な存在です。

そして、世界の存在はそれぞれに内的な「緊張(トノス)」を持っています。
つまり、静的な形・性質ではなくて、生きた運動性を持っていると考えたのです。
この「緊張」にはいくつかの階層性があります。鉱物は構造、植物には成長、動物には霊魂、人間には知性があるのです。
つまり、自然の階層性を、アリストテレスが形・性質の観点から考えたのに対して、ストア派は緊張のあり方として考えたのです。
そして、存在は「プネウマ」によって統一体として存在します。「プネウマ」はほぼ「霊魂」と等しい存在で、火と空気の中間的な存在です。

アリストテレスにとって重要なのは、個物の中にある普遍的な本質である形・性質であって、認識とはその本質を感覚を通じて理解することです。
ですが、ストア派にとっては、個物はそれ自身の固有性と個性を持ったもので、普遍とは単に言葉でしかありません。
そして、認識とは、内的緊張を持った霊魂が、内的緊張を持った対象の個物と交流を持って、影響を受けながら発展し、対象と調和するこ、「共感」するとです。
つまり、相互生成的な運動として考えたのです。宇宙ではすべてがすべての中にあり相互作用する連続して一体の存在なのです。
この発想は、ほぼ同時代の仏教の『華厳経』やプロティノスの思想と共通しています。

アリストテレスは、「AはBである」という命題を重視して、述語の中で、最低種概念だけを実在的なものとして重視し、それ以外の一切の様々な性質を軽視しました。
これに対して、ストア派は、「AはBした」という出来事を重視しました。
つまり、世界は最低種概念に枠づけられた存在としてではなくて、無限に多様化する出来事として捉えられるのです。
現代の哲学者ドゥルーズはこの点で、ストア派が静的なプラトン・アリストテレス哲学を否定するものだとして評価しました。

ストア派は自然の運動には神の摂理(運命)があると考えました。
そして、この自然の摂理を認識して、これに従って生きることを理想と考えました。
この摂理は「ロゴス」でもあります。ロゴスは知性的な存在ですが、ストア派は感情なとの肉体的な要素をプラトンのように非知性的な存在として否定しません。
病的・倒錯的な状態になって知性やロゴスに反するようになった感情を否定するのです。
また、ストア派は、プラトン同様に、天の星の世界は秩序に満ちた世界で社会や人間のモデルとなるべき存在と考えました。

プラトン、アリストテレスといったギリシャ本土の哲学が形・性質を重視したのに対して、ペルシャ、バビロニアなどのオリエント色の強かったストア派とソクラテス以前の哲学がともに「生成」を重視したことは興味深く思えます。
生成の哲学を展開したニーチェがゾロアスターを主人公にした書を著わしたことも不思議ではありません。

(ストア派の存在の階層)
技術的な火=ロゴス=摂理(運命)
内在的・種子的
アイテール
プネウマ=魂
人間
動物
植物
鉱物
空気

 


nice!(0)  コメント(0) 

7光線占星学理論とマグサイオイ文書 [ヘレニズム・ローマ]

-2Cにシリアで司祭(マギ)のマクシムスらによってズルワン主義=ミトラ教の占星学理論の基礎になった7光線理論が生まれました。
これは宇宙創造・進化を司る根源的な7つの原理である7光線の理論です。
ミスラが大熊座7星(北斗七星)に象徴される7つの光線を宇宙に発して、その組み合わせによって12星座や7惑星を経由して宇宙をコントロールするというものです。

ちなみに、大熊座7星が12星座よりも重視されるのには理由があります。
12星座や7惑星はすべて獣帯上を運動しますが、これらはすべて毎日地平線の下に沈む星々です。
ですが、小熊座7星(北極星を含む)や大熊座7星(北斗七星)はほとんど、あるいはまったく沈まない星々なので、世界的に12星座よりも上位の存在として重視される傾向がありました。
北極星は現在は全天の中心の不動の星なので最重要な星と考えられることが多いのですが、歳差運動を引き起こす地軸の回転があるので、現在の北極星が全天の中心にあるのはごく一時的なものでしかないのです。

7光線の中でも、第1から第3光線は最も根源的な光線でミスラへと戻ろうとする傾向を持っています。
これに対して、第4から第7光線は第3光線から派生したもので、宇宙に積極的に働こうとします。
そして、第4光線には1から3と5から7の間を取り持つ性質があります。
また、第1、3、7光線には形態の形成を促す性質、第5光線には知性の発達を促す性質、第2、4、6光線は内面的なものの発達を促す性質があります。

ズルワン主義では宇宙の創造・進化を5段階で考えます。
それは、宇宙の根源的な素材である卵の形成段階、惑星の形成段階、原人の形成段階、地球の生命の形成段階(生物の進化という発想は、ダーウィンの時代にはるかに先立って、紀元後のバビロニアに芽生えました)、人間の知的な進化の段階です。
このそれぞれの段階に働く主要な7光線があります。
それぞれ、第6光線、第3&7光線、第2&6光線、第2&4光線、第4&5光線です。7光線のそれぞれの簡単な役割については以下の表の通りです。

12星座は12の知性体であり、宇宙を取り囲んで守護する役割を与えられた存在です。
それぞれが特定のいくつかの7光線を吸収し宇宙内に発します。その対応は以下の表の通りです。
また、アフリマンが送り込んだ12の悪霊が存在し、これらはミスラによって退治され、地球の回りに張り付けられています。
ですから、地球には12星座の発する清浄な光線だけでなく、12悪霊を経過した不浄な光線も達すると考えられました。

また、7惑星も知性体(神々)ですが、これらもそれぞれに7光線を吸収し地球に発します。
その対応は前ページのの表の通りです。

カルデアの占星学の代表的な書は『アステロスコピカ』、『アポテレマティカ』、『ザラスシュトラの教え』、『ヒュスタスペスの神託』などで、ゾロアスター、オスタネス、ヒュスタスペスの名によってギリシャ語で書かれました。
また、マギ達によって書かれた書は総称して『マグサイオイ文書』と呼ばれ、内容は占星学に限らず、主にゾロアスターは占星術の師、オスタネスとヒュスタスペスは魔術と瞑想の師とされています。

カルデアの占星学、『マグサイオイ文書』は東西に伝えられて大きな影響を与えました。
西方へはエジプトのアレキサンドリア経由でギリシャ、ローマ世界に伝わりましたが、7光線理論は占星学の基礎であるにも関わらず、ほとんど伝えられませんでした。
ただし、中東、中央アジアではマニ教、サビアン教の中で生き続け、現在ではサビアン占星学としてより発達した形になっています。
ちなみに、曜日もカルデアの占星学に由来するもので、日本にも平安時代には伝えられました。
例えば日曜日は中国・日本では「蜜日」と表現されましたが、これはミスラが訛ったものです。

 

光線
12星座
7惑星
役割
1
牡羊座・獅子座・羊座
水星
計画のために創造的な破壊をして
組織的にエネルギーを集中する
2
双子座・乙女座・魚座
木星
包括的で内的な知恵をもって
賢明な建設を進める
3
蟹座・天秤座・羊座
土星
明晰な思考力と行動力によって
目的の達成のために行動する
4
牡牛座・蠍座・射手座
内的な葛藤を通して成長し
想像力を豊かに働かせる
5
獅子座・射手座・水瓶座
金星
独立心によって正義や物事を
正確に判断する
6
乙女座・射手座・魚座
火星
献身的で愛に溢れ
全体的な理想のために行動する
7
牡羊座・蟹座・羊座
太陽
形式や礼節を重視し、
プライドを持って行動する


ヘレニズムの宇宙論 [ヘレニズム・ローマ]

ヘレニズム期は、アレキサンダー大王のマケドニアがイタリアからペルシャ、インドの一部までを支配しました。
そのため、これ以降、東西文化の交流が活発になって、これまで以上に様々な思想が交流し合い、思想家達も各地を移動しました。

ですが、ヘレニズム、ローマ期には各地の都市や国が政治的な独立性を失ったために、反体制的、あるいは厭世的な思想も生まれました。
アテナイを中心とした哲学も、真理よりも精神的な平安を求め、理想社会よりも社会から離れて生きることを求めるものになりました。
一方、ローマの哲学は実際的で政治的なものが主流でしたが、オリエントからの宗教的、神秘主義的な思想運動を反映して、神秘主義的な思想も生まれました。


ヘレニズム期のオリエント・地中海世界には、バビロニアの宇宙論(カルデアのマギの世界観として知られていたズルワン主義)の影響に、プラトンの『ティマイオス』を代表とするギリシャ哲学の宇宙論を加えて、様々な宗教や思想を越えて普遍的に受け入れられた宇宙論が形成されました。
個別的な思想を紹介する前に、まず、この普遍的なヘレニズムの宇宙論を紹介しましょう。

ヘレニズムの宇宙論は「万物照応」を原理としています。
つまり、上位の世界と下位の世界が連続していて影響を与えるという「階層的な存在の連鎖」があります。
そして、宇宙(マクロコスモス)と人間(ミクロコスモス)は共に神の子として作られた生き物で、両者は様々な階層性を含む同じ構造を持った存在です。
つまり、「マクロコスモスとマクロコスモスの相同性」があるのです。

この宇宙論によれば、宇宙は地球を中心として同心円上に広がる7つの惑星天と恒星天という階層状の構造を持っています。
そして、宇宙の外には神の原型的な霊的直観的知性の世界があります。宇宙はこの神の世界をモデルに作られた1つの生きた存在で、魂を持っています
。この宇宙を司る魂は「世界霊魂(アニマ・ムンディ)」と呼ばれました
また、多くの場合、至高神と世界霊魂の間にいる宇宙の「創造神(デミウルゴス)」を考えました。
そして、たいていの場合は世界霊魂や創造神は宇宙の最高層の恒星天に居を構えていると考えます。

神の世界は「霊的知性(ギリシャ語で「ヌース」、ラテン語で「スピリタス」)」の世界です。
これに対して、宇宙は「魂(ギリシャ語で「プシュケー」、ラテン語で「アニマ」)」と「物質」からできています。
物質的には、惑星天や恒星天は「アイテール(霊気)」で、月より下の世界は「4大元素」でできています。
天は秩序に満ちた完全な不死の世界で、人間や社会が目指すべきモデルとなる世界です。
この基本的な3層説はプラトン主義に由来するものでしょう。

人間は本来は神の子として作られた神的な存在でしたが、何らかの理由で宇宙の中にへ、地上へと降りてきました。
ですから、人間の霊魂の中には、神の世界に由来する神的部分があります。
そして、人間は恒星天や7つの惑星天に対応した階層上の構造を持った魂と、物質的な肉体も持っています。
人間は死ぬとその霊魂は、ストア派とヘルメス主義では通常、7惑星天を通過して宇宙の最上部である恒星天の世界霊魂のところにまで戻ります。
ですが、グノーシス主義では宇宙を越えて神の元にまで戻ると考えました。
新プラトン主義は輪廻思想を持っていますので、霊魂は恒星天にまで戻ってから、再度、神々・ダイモン・人間・動物・植物のいずれかに再生します。
ただし、新プラトン主義のプロティノスは人間の霊魂の神的な部分は常に神の世界に存在し続けていると考えました。

この宇宙論によって死後観が大きく変わりました。
死後に地下で体験するとされた試練は月下界に移され、地下の野原や遠方の島にあるとされた楽園は、恒星天に移されました。
また、惑星天では、人の魂は1枚1枚服をぬぐようにしてそれぞれの惑星天から与えられた魂の性質を返しながら上昇すると考えられることもありました。

(ヘレニズムの宇宙論)
  
神の世界
霊的知性(ヌース)
 
---------------------------------------------------------
物質の世界
 
宇宙(マクロコスモス)
恒星天(楽園、世界霊魂・創造神)
7惑星天
月下界(煉獄、4大原素)
地上
人間(ミクロコスモス)
魂(プシュケー)


肉体

- | 次の10件 ヘレニズム・ローマ ブログトップ