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パウロとヨハネのキリスト教神秘主義 [古代ユダヤ・キリスト教]

キリスト教は神智学的には実りの少ない宗教です。
むしろ、神智学に対する宗教であって、神智学的な部分はほとんど他の宗教や思想から取り入れたものです。
キリスト教の神秘主義はパウロが聖霊の働きを重視したことに始まり、神智学はパウロがキリストがロゴスであるとしたことに始まります。

ヘレニズム化したユダヤ教では、神が息吹く「知恵(ホクマー)」を、宇宙創造の原型であって、宇宙に内在し、生命を与える女性の神的存在であると考えていました。
紀元前後のアレキサンドリアのユダヤ人神智学者のフィロンは、一神教をギリシャ哲学的に解釈した思想家です。
彼はプラトン主義、例えばクセノクラテスがイデアを神の思考とした考えと、ストア派の「ロゴス」の考え方を受け継いで、神が「知恵(ソフィア)」に男性の神的存在の「ロゴス」を生ませると考えました。
「ロゴス」は父なる神の思考内容であり言葉であって、世界の原型です。
そして、ストア派のように世界に内在するものではなくて、神と被造世界を媒介する存在です。
また、天使ケルビムが神の「恩寵」と「統治」の現れであると考えました。彼の言う「ロゴス」はズルワン主義のミスラ、「ソフィア」はアナーヒターに相当します。

これらの考えを受けて、パウロやヨハネ文書などが「イエス・キリスト=救世主(人の子)=ロゴス=光=生命=真理=恩寵=聖霊を送る存在」と考えました。
「ロゴス」であるキリストは父なる神の口から現れた言葉であり、宇宙創造の原型であり、知恵=真理であり、アダムが失った生命(具体的には終末後の永遠の復活として得られるもの)なのです。

そして、「聖霊」はマリアに降りてキリストを生ませる存在、キリストが洗礼を受けた時に降りた存在、人々に生命と真理を与える存在、終末に人々の救済にやってくる助け主なのです。

つまり、イエス・キリストをフィロンの「ロゴス」、あるいは「ホクマー」を男性化したものとして、「聖霊」を「ホクマー」や「ソフィア」から女性としての性質を取り除いたものとしたのです。

ですが、このようなキリスト教の理解は一部の傾向でした。
多くは、キリストは新たな律法をもたらす存在、ペテロが考えたようにキリストは神の下僕であり復活によって天に召された存在と考えられていました。

ギリシャ・オリエントの神智学の影響を受けたパウロ・ヨハネ的解釈から、聖霊によってキリスト=生命(不死性)を得てそれを通して父なる神との結合を目指す神秘主義的な傾向が現れました。
ただ、あくまでもキリストという恩寵を通して受動的にしか霊的体験や不死性の獲得がありえないという点がキリスト教独自の特徴です。
初期の代表的な神秘主義的な教父には、シリアのアンティオキアのイグナティオスがいます。
このような神秘主義的な傾向は、シリアやトルコで顕著でした。

もう一つ重要なのは、パウロがイエス・キリストの受難・復活を宇宙的な出来事としたことです。
ゾロアスター教においても、ゾロアスターの登場は悪の撃退へと向かう宇宙的な転機に当たりますし、ゾロアスターは昇天して霊的な存在となります。
ですが、イエス・キリストの場合、アダムの原罪=死に対するイエス・キリストの贖罪=生命・不死と考えられた点が特徴です。
パウロではまだ現れませんが、後に、キリスト教ではイエス・キリストの受肉に関する考え方と相まって、その宇宙的な解釈はより重要性を持つようになります。


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