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はじめに (目次) [はじめに (目次)]

このブログでは、古代のオリエントに発して東西の文化交流によって発展した神秘主義的な哲学、思想の流れを扱います。
このような試みは他にはないと思いますし、多数の独創的な解釈を行います。

神秘主義的な哲学は「神智学(セオソフィー)」とも呼ばれます。
これは時代や地域を超えた普遍性を持っているので、「永遠の哲学」と呼ばれることもあります。

このブログでは、「神智学」を、哲学的・概念的に表現された思想だけではなくて、象徴的イメージや神話として表現された思想も含めて考えます。

神智学の中にある時代や地域を超えた共通性が、歴史的な影響関係があって生まれたものか、もともと人間に備わった共通性から来たものが、実証することは不可能です。
本ブログでは、かなり直接的な影響関係があったと推測して紹介していきます。

古代の文化の中心地は、世界最初の都市文明を築いたメソポタミアと、世界最初の巨大帝国を築いたペルシャです。
ですから、大局的に見ると、この地方を中心にして東西に神智学が伝わっていったと推測できます。
そして、神智学の主な最終形は、西洋ではブラバツキーやシュタイナー、イスラム世界ではイスマーイール・タイイブ派やスフラワルディー、インド文化圏ではカーラチャクラ・タントラなどでしょう。

下記に順次書いていく予定の目次を掲載します。
既存の記事にはリンクを張っています。
15年ほど前に書いた文章もあります。
随時書き換えたりもします。

*最近、執筆を再開しましたが、コメントをいただいても気づかなかったり、お返事できないこともあるので、ご了承ください。(2018.3.29)

*姉妹ブログ本「神話と秘儀」「世界の瞑想法」「仏教の修行体系」「夢見の技術」もご参照ください。

==目次==

◆序:神智学とは

神秘主義とは  ・3つの表現スタイル
象徴と象徴体系  ・神智学とは(ソフィアとロゴス)
創造神話・宇宙論・救済神話・哲学からの神智学の誕生

◆古代編 

◇創造神話と古代神智学
創造神話の神智学化  ・宇宙開闢神話の構造
天地創造神話の構造  ・エジプトの創造神話
メソポタミアの創造神話  ・ギリシャの創造神話
インド・ヨーロッパ語族のパンテオン  ・インド・ヴェーダの創造神話
インド・ヒンドゥー教の創造神話  ・イラン・ペルシャの創造神話

◇バビロニアの宇宙論とペルシャの救済神話・神智学
  ・占星学的宇宙論と神々  ・マズダ教 vs ミスラ教
ゾロアスター教の宇宙論:時間  ・ゾロアスター教の宇宙論:パンテオン
ゾロアスター教の宇宙論:空間
ズルワン主義の潮流   ・ズルワンと三位一体
ズルワン主義の宇宙論  ・ミトラの顕現と救済論

◇古代ギリ シャの神智学
ソクラテス以前の哲学  ・至高存在と根源の探究
生滅する宇宙  ・オルペウス派の輪廻思想
エンペドクレスによる統合  ・中期プラトンの神秘主義哲学
不文の教説とピタゴラス主義  ・プラトンの宇宙論
アトランティス伝説とオリエント神話  ・後期プラトンの観念哲学
アリストテレス神学  ・プラトン、アリストテレスの影響

◇ヘレニズム、ローマ期の神智学
ヘレニズムの宇宙論  ・7光線占星学理論とマグサイオイ文書
12星座神話とミトラス教  ・ストア派
中期プラトン主義  ・ヘルメス主義
錬金術  ・グノーシス主義
カルデア人の神託  ・マニ教
新プラトン主義  ・プロティノスの一者
プロティノスの流出  ・プロティノスの階層
プロティノスの帰還  ・イアンブリコスと降神術
プロクロスの階層と系列  ・プロクロスの帰還

◇ユダヤ、キリスト教の神学と神智学
メルカーバー神秘主義  ・セフィロート神秘主義
パウロとヨハネのキリスト教神秘主義  ・キリスト教の正統と異端
ギリシャ正教のテオーシスとヘシュカズム  ・教父哲学と神の闇
偽ディオニシオスと天使の位階

◆古代東洋&中世・近世編

◇イスラム教の神智学
  ・古代思想の継承と東西交流  ・ムハンマドの夜の旅
シーア派とイマーム  ・シーア派のミスラ神話(ミール派イスラム)
12イマーム派と隠れイマーム  ・イスマーイール派の流れ
初期イスマーイール派の神話  ・スーパーシーア派と7大天使
理性と信仰の対立  ・イスラム哲学とイブン・スィーナー
スーフィズム  ・スーフィズムと意識の階梯
スーフィズムの秘密言語と象徴  ・イスマーイール派神話の哲学化
イスマーイール派とアダムの復帰  ・スフラワルディーの神智学
イブン・アラビーの神智学

◇古代インドの神智学
古代から中世へ  ・オリエント・イランからの影響
・インド神智学の特徴  ・サーンキヤ哲学
ヴェーダーンタ哲学  ・ヨガ派の修行体系
ヒンドゥー教神智学の階層論  ・ヒンドゥー教神智学の空間論
ヒンドゥー教神智学の時間論  ・仏教の流れと神秘主義
部派仏教のアビダルマ哲学
南方上座部とブッダゴーサの『清浄道論』
説一切有部とヴァスヴァンドゥの『倶舎論』
大乗仏教の誕生  ・如来蔵思想
大乗仏教の仏陀観と真理観  ・中観派と般若学  
瑜伽行唯識派

◇中世インドの神智学
タントラ(ヴァジュラヤーナ、密教)  ・タントラ生理学とハタ・ヨガ
ヴィシュヌ教、シヴァ教、シャクティ教(改)
ヴィシュヌ教パーンチャラートラ派(改)
シャイヴァ・シッダーンタ(聖典シヴァ派)  ・シヴァ教カシミール派
・シャクティ教シュリー・クラ派  ・シャクティ教シュリー・ヴィディヤー派
・タミル18人のシッダの伝統
密教(タントラ仏教)の発展段階
金剛乗と金剛頂経(ヴァジュラ・ヤーナ)
無上ヨガ・タントラの思想と潮流  ・無上ヨガ・タントラの生起次第
無上ヨガ・タントラの究竟次第
秘密集会タントラの思想  ・秘密集会タントラの二次第
チャクラサンヴァラ・タントラの思想
チャクラサンヴァラ・タントラの思想の究竟次第
カーラチャクラ・タントラとシャンバラ伝説・終末論
カーラチャクラ・タントラの思想  ・カーラチャクラ・タントラの二次第
・マハー・ムドラー  ・ゾクチェン
・イスマーイール・パミール派
・スーフィズムのインドへの影響  ・シク教

◇中国の神智学
道家思想の成立  ・漢代の道家思想の影響
南北朝時代の道家思想:玄  ・道教の成立
・存思・行気・煉丹術  ・方術
・陰陽五行説  ・その他の象徴体系
格義仏教  ・華厳宗
・天台宗  ・禅宗
宋学と程伊川  ・全真教
・内丹の歴史  ・内丹の理論(気の身体論)
・内丹の行法(仙道行法)  

◇中世のユダヤ・キリスト教の神学と神智学
マグダラのマリア派とカタリ派  ・テンプル騎士団
ヒルデガルトと女性の神性  ・3つのプレ・ルネサンス
スコトス・エリウゲナ  ・托鉢修道院とスコラ学
エックハルトと自由心霊派  ・ラビアのテレサと十字架のヨハネ
・カバラと生命の樹  ・グレゴリオス・パラマスのヘシュカズム
・ゲルマン神話とキリスト教の習合

◇近世ヨーロッパの神智学
・イタリア・ルネサンス(フィチーノ、ピコ)
・北方ルネサンス(アグリッパ、パルケラスス)
・アンドレーエの薔薇十字思想
・イギリス・ルネサンス(ディー、フラッド)
・ヤコブ・ベーメ  ・スウェデンボルグ 
・近代フリーメーソンと啓蒙主義  ・近代哲学と神秘主義

◆近代・現代編

◇近現代 ヨーロッパ
・サン・マルタン  ・マルティニズム
・ルネ・ゲノン  ・ブラバツキーと神智学協会
・シュタイナーと人智学協会  ・グルジェフ
・ゴールデンドーン  ・アレウスター・クロウリー
・ピート・キャロルのカオス魔術  ・ニュー・ペイガニズム

◇近現代 インド
・ラーマ・クリシュナとヴィヴェーカーナンダ
・クリシュナムルティ  ・オーロビンド
・ラマナ・マハリシとニサルガダッタ・マハラジ
現代ヨガ(アイアンガーとパタビ・ジョイス)

◇近現代 アメリカ 他
・ケン・ウィルバーとニューエイジ  ・ジョン・C・リリー
・ナイトスタンド・ブッディズム
・ニュー・シャーマニズム  ・プロセス指向心理学


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シヴァ教カシミール派 [中世インド]

8-9Cのヴァスグプタによる「シヴァ・スートラ」に始まるのがシヴァ教の「カシミール・シヴァ派」です。
カシミールは、古来シヴァ信仰が盛んな地です。

カシミール派には、さらに次の2つの分派があります。
「振動派(スパンダ・シャーストラ)」は、上述したヴァスグプタの流れを組む派で、シヴァは自らの意志だけで創造を行うとします。
「再認識派(プラトヤビジュニャーナ・シャーストラ)」は、「シヴァ・ドリシュティ」を著したソーマーナンダに始まる分派で、アビナヴァグプタを代表的な思想家とします。

カシミール派の思想は以下の通りです。

カシミール派は、本来二元論的なシヴァ派の伝統的な聖典の「アーガマ」を、シャンカラの影響を受けて一元論的に解釈します。

「最高シヴァ」が、自由意志で「創造」、「維持」「帰滅」、「隠蔽」、「恩寵」という5つの働きを行うとしますが、これは「シャイヴァ・シッダーンタ」と同じです。

また、「最高シヴァ」と「個我」の同一性の知識が解脱であり、それがないことが束縛であること、「最高シヴァ」が、「個我」を救うために世界を創造し、「汚れ(マラ)」が弱まった時点で、グルの姿となったシヴァの恩寵によって儀礼(解脱を与えるディークシャー)を行なって取り除くとします。

カシミール派も「恩寵」を重視しますが、「無知」も含めて、その除去(宇宙創造)の全体は、「最高シヴァ」の「遊戯」であるとも表現されます。

カシミール派は、一元論的な「最高シヴァ」から、「パティ(主)」=シヴァ、「パシュ(家畜)」=個我と現象世界、「パーシャ(縄)」=6つの覆い、という3実体、細かくは36原理を、実体として展開します。

カシミール派の宇宙創造論は、有神論的な原理をサーンキヤ哲学の25原理の上に置くという点で、ヴィシュヌ教の「パーンチャラート派」と同じです。

まず、「最高シヴァ」は、まず、純粋観察者で、静的で、光輝である「シヴァ」と、自己反省を本質して、動的で、世界を生む「シャクティ」が一体なる状態に展開します。

次に、そこから「永遠のシヴァ(死体が象徴)」、「主宰神」、「清浄な知」という3原理を生み出します。

次に、「6つの覆い(カンチュカ)」と呼ばれる、原物質の「マーヤー」と「5つのパーシャ」を生み出します。
「5つのパーシャ」は、「ニヤティ(被限定者)」、「カーラ(時間)」、「カーマ(執着)」、「ヴィディヤー(限定された知)」、「カラー(限定された能力)」です。

以上は、「清浄な道」と呼ばれる段階ですが、「6つの覆い」が、以下に展開されるサーンキヤ哲学の「25原理」を制限します。
ですから、「プルシャ」も、純粋な観察者ではなく、制限された行為の主体でしかありません。


実践においては、ヨガは「内的供養」、儀式は「外的供養」と表現されますが、前者が後者の前提となります。
「内的供養」は、マントラを身体に置いていく「ニヤーサ」による自己神化を本質とします。
マントラはエネルギーの人格化であり、神格そのものであると考えます。

「内的供養」では、観想とマントラを唱えながら、指先で自分の身体の各部分に、対応する神のマントラを置いていきます。
足先から順番に、36原理を上昇していくのです。

上昇による自己神化で終わらず、その後に下降がありますが、これの過程は、「清い原理の創造」と呼ばれます。

救済のプロセスは、まず、シヴァの自由意志による「恩寵の降下(シャクティパータ)」があります。
これによって、シヴァへのバクティ(信愛)の念が起こります。
そして、「ディークシャー(儀式)」を受けたいという気持ちが生じます。
そして、自身がシヴァであることを思い出して(再認識)、解脱に至ります。

この「再認識」は、「恋にこがれる美人」に喩えられます。



宇宙論の階層
最高シヴァ/シャクティ
永遠のシヴァ/主宰神/清浄な知
マーヤー、5つのパーシャ
サーンキヤ哲学25原理

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シャイヴァ・シッダーンタ(聖典シヴァ派) [中世インド]

「シャイヴァ・シッダーンタ(聖典シヴァ派)」は、8Cにカシミールで、パーシュパタ派を母胎として徐々に成立しました。
派の名前は、「確立されたシヴァ教の教え」という意味です。
シヴァ聖典を解釈する学派のような存在です。

カシミールを中心としたサンスクリット語を使う「サンスクリット・シャイヴァ・シッダーンタ」と、南インドのタミル語を使う「タミル・シャイヴァ・シッダーンタ」があります。

タミルには10Cに伝来し、チョーラ朝と結びついて発展しました。
聖典は12Cからタミル語で書かれるようになり、タミルに特徴的なバクティ思想の影響を受けながら、多様に展開しました。
タミルの「シャイヴァ・シッダーンタ」の初期の重要な人物は、メイカンダールです。

「シャイヴァ・シッダーンタ」の思想は次のようなものです。

存在を、「パティ(主)」である最高神のシヴァ、「パシュ(家畜)」である「個我」(本来はシヴァと一体)、そして、「パーシャ(縄)」である「個我」をシヴァから離し制限する覆い、3つに分けることは、パーシュパタ派を継承しています。

「パーシャ」には、「個我」の根源的な汚れ「マラ」、原物質・質料因の「マーヤー」、「カルマ(業)」があることも同じです。


「最高シヴァ(パラマ・シヴァ)」は妃の「シャクティ」と一体の存在で、「個我」を救済するために「創造」、「維持」、「帰滅」、「隠蔽」、「恩寵」という5つの働きを行います。

「シヴァ」は「シャクティ」を通して「マーヤー」に働きかけて世界創造を行います。
「マーヤー」は神自身のエネルギー(シャクティ)ではなく、「ビンドゥ」から発生したものです。
この考え方は、「シヴァ」の純粋性を保持するものであり、二元論的な思想です。


「個我」の汚れが弱まった時点で、シヴァが人間のグルの姿で現れて、「ディークシャー(儀式)」を行なって、「個我」の汚れを切り離します。
これによって、死の際に解脱をします。

「個我」は、「シヴァ」の「恩寵」を契機として、自身と同一の「シヴァ」の本質を理解して、救済されます。
ですから、「恩寵」と善行(徳目)を重視し、儀礼やヨガは重視しません。

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